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2011/04/18 なまざけ大黒正宗

神戸は灘御影の、株式会社安福又四郎商店が醸す「大黒正宗」は名酒である。そしてその酒には、年に三回の楽しみがある。

レギュラーの「大黒正宗 原酒」は、冷や卸ともいえる酒。新酒が十分に熟成されるのを待って出荷される。レギュラーとはいえ、年によってそれなりの変化が楽しめ、毎年の出荷が心待ちとなる。

新酒の仕込みが始まり、年末に搾りがあれば、「しぼりたて 原酒」が出てくる。これは上記の「原酒」の熟成前の酒。ピチピチとした炭酸を含む、フレッシュ感あふれる香味は季節の楽しみだ。

それからしばらく、「しぼりたて」を低温で半年間寝かせた、やはり火入れを行わない酒、「なまざけ大黒正宗」が楽しめる。この酒は三月頃瓶詰めされ、四月には呑むことができる。

そう、本日口を切っていただいた酒がそれ。「生きたままの酵素がゆっくりと熟成をすすめ、フレッシュさが残るなかにもしっかり味ののったお酒」とのふれこみだ。
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この酒も毎年の楽しみとなっている。心待ちにしたその酒を、まずはそのまま、保冷酒庫から出して冷えた状態でいただく。

意外と図太い酸だ。ただ、そんななかにも相当に透明感がある。要するに、(決して悪い意味ばかりで使っている用語ではないと断ったうえで)田舎臭くない。

珍しい。通常、骨太の酸、イコール「図太さ」とか「どっしり」といったイメージなのだ。なのに、それが簡単に覆されてしまう。

続けて温く燗につけてみる。これは素晴らしい。当然、温度上昇によって甘味が引き立ち酸が引っ込むのだが、それによってもたらされる香味の調和と、なおかつ保たれる透明感の両立。

なかなかに凄い。普通、燗につければ旨味が増す。それはよいのだが、同時に香味の印象はやや濁る。

しかしながら、なまざけ大黒正宗は濁らない。これはまるで、上方の料理で手際よく採られた出汁のようである。 (C)2011 taikomochi
by taikomochi-otona | 2011-04-18 21:31 | 清酒 | Comments(0)

酒がなくても生きちゃいけるが、そんなん人生とはよう言わん。


by taikomochi-otona