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2011/10/31 宅呑み「大黒正宗」

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「地酒地酒と言うが、それでは地酒でない清酒とは何かと言うと、例えば灘、伏見の酒となるか。しかし製造量も大きな要因であるはずで、「大黒正宗」を醸す蔵元、株式会社安福又四郎商店などは御影郷という立派な灘に位置しながらも、たった二百石(一升瓶換算二万本)というその量からすれば、立派な地酒である。

実はもともとは二万石を醸す大手だったのが、震災による被災を契機に生産量を何と百分の一に落とし、品質本位の手造りの蔵として再興したのである。一口に百分の一と言うが、どんな会社でも売上高が前年の1%になることを想像してみて欲しい。

商品価値自体が事前事後で同じであれば、当然、百分の一の規模では商売は成り立たない。したがって等しく「清酒」という製品を製造しながらも、今までとは桁違いに高い価値を造り出す必要がある。

そしてそれは、すべてのプロセスを変えることから始まるであろう。まさしくゼロベースからのスタートであり、負債を含めたさまざまな負の遺産があるだろう分、むしろ大きなマイナスからの、である。

私は以前の大黒正宗を知らないが、再建直後の前世紀からいただいている。灘らしい辛口の口当たりとキレ。決して水っぽくない、ピリピリとすることのない、また体力を奪うかのように重くない辛口。加えて、燗をつけるとふわりとした優しさ、繊細さが現れて同居する。

見事だ。灘酒の良さをしっかりと受け継ぎながらも、大手灘酒にはない繊細な美味しさを持つことについては、歴史的経緯を別としても敬服する。」

かっこ括りにしたのは、この文章は、かつて静岡地域情報誌に連載を書かせていただいていた際に掲載したものだから。今宵、拙宅ではすっかりお馴染みのこの酒をいただく。もちろん、ぬる燗につけて。

こんにち、本来ならば直接、岩手宮城福島茨城あたりの酒呑むにこしたことはないだろう。しかし、この大黒正宗の経緯を思い起こしつつ、ゆるり味わうのにも意味があろう。 (C)2011 taikomochi
Commented by kao at 2011-11-01 18:48 x
お酒という人がいて、
その人を語るかのようで、
素晴らしい表現だなぁ。。。と思います。

この 『 大黒正宗 』 さんが、笑ってどう答えるかも見所です。

Commented by taikomochi-otona at 2011-11-01 23:04
かおさんこそ、素晴らしい独創的な表現を、まことに有難うございます

何か自分でも、昔の方が気を入れて書いていたような気がして、
少々反省をする機会となりました。
by taikomochi-otona | 2011-10-31 21:41 | 清酒 | Comments(2)

酒がなくても生きちゃいけるが、そんなん人生とはよう言わん。


by taikomochi-otona