
しばらくご無沙汰していたが、数年前までよく楽しんでいた、山口県岩国市の旭酒造株式会社が醸す清酒「獺祭(だっさい)」。この酒、今や大変なことになっている。
メディアには頻繁に登場するわ、販売量はバンバン伸びるわ、手に入らないわ。地酒蔵としては珍しい四季醸造(空調設備を整え年間を通じて酒造りができる)も始め、海外への進出も著しい。
素晴らしいことで、以前から呑んでいた身として誇らしいのだが、自身の性格からこうなると離れがち。流行りの酒を呑んでいると思われたくない天邪鬼さ、加えてもうオレが呑まなくても大丈夫だから、という勘違い嫁出し気分。
だがしかし、立派になった今はどうよ、という気持ちもある。正価で手に入る機会があったので、旬の一本を購ったのであった。
「獺祭 純米大吟醸48 寒造早槽(かんづくりはやぶね)しぼりたて生」は、四季醸造の蔵にあって、もともとの寒造りの時期の仕込みで造られた新酒を呑んでもらおう、というコンセプト。冬季限定品である。
かつ特徴的なのは、二種類の大吟醸酒のブレンドであることだ。レギュラー商品の純米大吟醸50をベースに、磨き三割九分(看板の遠心分離器で搾られ製品化される酒)を八対二で合わせ、全体として48%の精米歩合となっている。
「純米大吟醸50のしぼりたての爽やかさに磨き三割九分の華やかさを加味した」とラベルにある。原料米は全量山田錦、アルコール度は16度と高め。
まずは冷やできいたが、立香は穏やか。味わいは甘味がかなり立つが、苦味と旨味も同時に味わえる。でもやはり、結構甘いのは酸が少ないからか。
次いで、ごく温く燗につけた。どんな酒でも燗を試してみるのが、ワタクシの流儀である。より甘くなってしまうかと思ったが、そうでもない。
人肌燗でボリューム感が増し、それぞれの味わいがよりしっかり感じられる。もともと酸味が強くないので、酸と甘のバランスが崩れず、特に甘味がより増すということもない。
ただ、個人的嗜好として酸のある酒が好きなのだなあ、と改めて確認することとなった。そういう意味では、ワタクシにとってはフツーに美味しい酒なのであった。 (C)2014 taikomochi